高齢者が快適に過ごせる部屋の色調とは

家具やカーテン、シーツ、床、壁など、お部屋の印象は色によって大きく変わってきます。高齢者の方が暮らす住まいは、ご本人の好みを取り入れつつ、過ごしやすく安全であることにも気を配る必要があるでしょう。色の持つ印象が気持ちに影響することはよく知られていますが、高齢者の場合は安全性にも関わってくることをご存じでしょうか?

住み慣れた部屋のインテリアをガラッと変えることは難しいかもしれませんが、高齢者が見えやすい色・見えにくい色をよく理解してお部屋づくりに役立てていきましょう。

 

部屋の色調が高齢者にどう影響する?

 

同じものでも、色が違えばその印象は変わります。例えば、赤は元気ややる気、興奮などをもたらしやすい色と言われており、暗めの青は冷静さや悲しみなどの印象を与える色だと考えられていますね。お部屋全体が暖色でまとめられた場合と、寒色でまとめられた場合とでは、その印象も大きく変わります。もちろんバランスや色の強さも影響を及ぼします。

暖かみのある色がところどころに用いられたお部屋は、全体が明るく活発な印象になるでしょう。一方、青や黒、グレーなどの寒色が多いお部屋は、寒さや寂しさ、冷たさなどを感じやすくなります。高齢になると、どうしても家の中・部屋の中で過ごす時間が増えます。色調によって気分が落ち込む・落ち着かないといったことがないように、リラックスできる色の組み合わせを意識しましょう

また、高齢になると見えやすい色と見えにくい色が出てきます。見えにくい色が多く使われていると、識別が難しく認識しづらい、転倒しやすいといった問題も生じるため注意が必要です。

 

高齢者が見えやすい色・見えにくい色

高齢者が見えやすい色見えにくい色

目の老化は40代から徐々に進むと言われています。目の水晶体が紫外線によって濁ってくることが原因の1つです。また、白内障などの目の病気にもかかりやすくなります。

 

高齢者が見えにくい色

 水晶体が濁ると、茶色のサングラスを常に装着しているような状態となり、特に青色などの寒色や黄色は見えにくくなります

また、色の濃淡も認識しにくくなるのが特徴で、若い頃は「おしゃれだ」と思ってた絶妙な配色がよく分からなかったりもします。高齢者の場合、単に同じ色の濃淡だけでなく、以下のような色の組み合わせが区別しにくくなる傾向にあるようです。

・緑と黒

・青と茶

・水色とベージュ

・水色とグレー

 

高齢者が見えやすい色

 高齢者の場合、赤色やオレンジは認識しやすく、さらに緑色は目が老化しても色の見え方に変化が起こりにくく好まれやすいと言われています。

また、濃い色同士・薄い色同士の組み合わせよりも、明暗がはっきりと分かれるような色使いの方が分かりやすくおすすめです。

 

リラックスしやすい色

 高齢者に限らず、人は自然を連想させるような緑色や茶色などが親しみやすく、落ち着きやすいとされています。自然や大地をイメージできる色のことを「アースカラー」と呼び、緑、茶、ベージュ、青などの色は落ち着ける空間づくりで特によく使われています。こうした色合いは高齢者にも親しみやすく、暖色との組み合わせの相性も良いです

 

高齢者にとって安全で分かりやすい環境づくりのために

 ちょっとした段差があって転倒に注意が必要な場所には、アースカラーの床に暖色である赤色のテープを貼ってみると、色で注意を意識づけることができるでしょう。逆に、ナチュラルな木目の床に黄色のテープを貼ってしまうと、高齢者の目には見えにくく気づかないかもしれません。

必要なものや注意しなければならない場所がハッキリと分かると、安全性を高めるだけでなく居心地も良くなります。高齢者にとっての色の見え方を意識して、家具は茶色やベージュで統一し、強く認識したい道具や場所には赤色などを使うといったように工夫してみてはいかがでしょうか。

 

照明の使い方にも工夫を

照明の使い方にも工夫を

高齢になると、色の見え方に変化が生じ、微妙なコントラストが分かりにくくなったり見えにくい色が出てきたりします。そこで、よく見えるようにするために、部屋を明るくするという対策がよくとられます。

しかし、白内障の方にとっては、強い光りが非常に眩しく不快になることもあるため、明るすぎる照明を1つだけ用意すると居心地が悪くなる可能性があります。白内障は、80歳を超える頃にはほとんどの方が患うと言われており、高齢者がいる住まいでは特に注意が必要です。部屋の明るさを保ちつつも強い光を直視しないようにするには、間接照明がおすすめです。

また、お昼はしっかりカーテンを開けて日光が射し込むようにすると、自然の光が部屋全体を明るくし気分も高めてくれるでしょう。

 

色を上手に活用して暮らしやすい部屋づくりを

 高齢者が認識しやすく心地よい空間づくりにするために、色を上手に活用していきましょう。ポイントは、リラックスできるアースカラーをインテリアに取り入れて、注意しなければならない部分はコントラストの強い色で印をつけることです。ちょっとした段差や手すりなどは、認識しやすい色を使ってみてはいかがでしょうか。