玄関の出入りが難しくなった時の対処法

 伝統的な日本家屋は、玄関の上がり框が30cm以上になっているものも多く、高齢になるにつれ徐々に移動が難しくなる場所とも言えます。玄関の出入りが難しくなることで外出することが面倒になり、とじこもることで足腰が弱くなるという悪循環が生じることも。

 しかし、少しだけ工夫をしたり便利な道具を活用したりすれば、安全に自宅への出入りができるようになります。介護を受けながら生活している人の場合は、介護をする方の負担を減らすだけでなく双方の安心感にもつながります。具体的に、高齢になって玄関の出入りが難しくなった時の対処法について見てみましょう。

 

玄関の出入りはここをチェック!

 高齢になると、杖を使ったり車イスを使ったりする方も多くなります。身体の状態に合わせて、安全に家への出入りができる方法を考えていく必要がありますね。そこで、まずは以下のポイントを確認してみましょう。

 

玄関の段差は安心して移動できる?

 歩いて移動をする人でも、足腰の力が弱くなってくると段差の上り下りが難しくなってきます。体のバランスを崩しやすい場所でもあるため、段差を小さくするか手で支えられる家具や手すりが必要かもしれません。

 

靴の脱ぎ履きは安全に行える?

 高齢者の場合、靴の脱ぎ履きを立って行うとバランスを崩しやすく、転倒の危険性も高まります。一瞬のことかもしれませんが、片足立ちになる姿勢や大きく前屈みになる動作が負担になりやすいのです。靴の脱ぎ履きは、座って行えるように椅子などを準備しておくと良いでしょう。

 

外回りの段差は問題ない?

 家の外回りに段差があると、せっかく玄関がクリアできてもその先の移動が難しいという問題も生じます。移動手段に応じて、快適に動ける環境づくりを行う必要があります。

 

【移動の方法別】玄関の出入りの改善方法

 杖、歩行器、車イス…と、高齢者の移動をサポートする道具は様々です。足腰の状態に応じて適したものを使いますが、玄関の出入りを考える時はそれらの道具が問題なく使える環境を整えましょう

 

杖を使っている方の場合

手すり

 歩行がやや不安定ながら何も使わずに歩いておられる方や、杖を使っている方は、なんとか頑張れば玄関の段差を乗り越えられるかもしれません。しかし、踏み台を置いて段差を小さくしたり、体重を預けても問題ないような家具や手すりを支えにしたりする方が安心でしょう。麻痺がある方については、上る時と下りる時とでは手すりの位置が逆になります。手すりを両方設置するか、片側のみに設置するかで動作も変わってくるため、リハビリ専門職や福祉用具の専門家などの意見を取り入れると安心です。

 

歩行器を使っている方の場合

歩行器

 歩行器を普段から使っている方の場合、両方の手でしっかりと支えられる環境で玄関の段差を上り下りすると安心、というケースが多いです。「両方の手すりを設置するのは大変なのでは」と思われるかもしれませんが、最近は狭い玄関でも取り付けやすいレンタルできるものもあるため安心してください。なお、歩行器は、屋外用と屋内用の2台を持っておくと便利です。

 

車イスを使用している方の場合

 家の中も車イスを使っている方の場合は、車イスのまま家への出入りができる環境を整えておくと負担が少なくて済みます。スロープや段差解消機がよく選ばれます。

 

・スロープ

スロープ

 スロープは、必要時のみ設置して、使わない時は畳んでおける点がメリットです。他の同居家族が玄関の出入りをする時に邪魔にならず、玄関の環境を変えずに利用できる上、介護保険ではレンタルすることも可能です。

 しかし、スロープの長さは、玄関等の上がり框の高さによって異なり、上がり框が高ければ高いほどスロープは長くなります。基本的に、スロープは段差の高さの8倍程度の長さが必要です。玄関まわりに十分なスペースがあれば問題ないでしょうが、家屋やその周辺の環境によってはスロープが適さない可能性もあります。

 

・段差解消機

 スロープを設置できない・適切でない家屋や、スロープを使って介助することが困難な家庭では、段差解消機が便利です。車イスが十分に乗るくらいのスペースが必要となり、1度設置すると個人では移動させることが難しいですが、電動で上下して家への出入りが簡単に行える便利な機械です。

 段差解消機は、玄関に置くとスペースを占領してしまう可能性もあるため、犬走などに設置するケースも多々あります。電源を入れる必要があるため、その点についても考慮して場所を決めていく必要がありますが、設置については福祉用具等の専門家に相談すると安心です。階段昇降機を使って、ご自身で操作ができれば、車イスに乗っている方が自由に外出できるというメリットもあるでしょう。

 

玄関の出入りが難しくなった時は便利な道具を活用しよう

 介護が必要になったり、少し足腰に不安が出てきたりすると、どうしても活動性が低下して家にとじこもりがちになってしまいます。しかし、できるだけ元気に今現在の持っている力を維持するためには、外にでかけて動いたり誰かと会って話したり、好きな場所でリフレッシュしたりする時間が必要です。玄関の出入りが難しくなってきたときは、安全に行き来できるような道具を活用したり、どうすればより安全かを考えたりして対処していきましょう。