高齢の方が暮らしやすくなる「音環境」の整え方

年齢を重ねるにつれて聴力が低下する「老人性難聴」は、多くの高齢者が抱える悩みのひとつです。テレビの音量を大きくしないと聞こえない、会話が聞き取りにくい、雑音が聴こえるなど、聞こえにくさは孤独感やストレスに繋がり、生活の質を大きく低下させる原因となります。

 

そのため、家庭での音環境を整え、少しでも音へのストレスや聞こえにくさを軽減していく必要があります。この記事では、高齢者の方が快適に毎日を過ごせるよう、自宅の音環境を改善する方法をご紹介します。

 

高齢者にとって音環境の改善が必要なのはなぜ?

加齢によって聴力が低下する老人性難聴は、誰にでも起こり得ることですが、老人性難聴が進むと、以下のような影響があります。

 

・コミュニケーションの壁

生活音や会話が聞き取りにくくなると、日常生活に支障をきたし、スムーズなコミュニケーションが難しくなります外出を控え閉じこもりがちになったり、会話が減ったりする方も少なくありません。

 

・周囲からの誤解

会話が聞き取りづらく見当違いの応答をしてしまったり、聞き返すことが増えたりすると、相手から疎ましく思われたり、人間関係の悪化、病気を心配されることもあります。

 

・ストレスや睡眠の質の低下

突然の音や雑音に対して敏感になりストレスがたまる原因になったり、物音が気になって眠れないことで睡眠不足に悩む方もおられます。

 

・社会からの孤立や自信喪失

社会とのつながりが希薄になることで、孤独感や孤立感を抱く可能性が高まり、「自分が聞こえにくいことがダメなんだ」と自信を失い、意欲の低下につながることもあります。

 

・安全面でのリスク

火事や火災報知器などの音が聞き取りにくい場合は、緊急時の対応が遅れる恐れがあります。外出時では、自動車や自転車の音に気付かず、交通事故につながることも。

 

・認知症へのリスク

聴覚刺激の減少や社会的な孤立などにより認知機能の低下をもたらす恐れがあります。

 

老人性難聴は、単に聞こえにくいだけでなく、心理面や社会面、健康面にも影響します。そのため、高齢者の方が安全で快適な生活を送るためには、会話や生活音が聞き取りやすく、ストレスのない音環境を整えることが大切です。

 

家庭でできる防音環境の整え方

老人性難聴の方が聞こえにくさを感じるのは、家電や床の音、外から聞こえる音などが、大切な音を聞こえにくくしてしまっている可能性があります。

テレビやインターホン、警報音などの大切な日常生活の音や会話が聞き取りやすくなるよう周囲の音を防ぎ、必要な音がクリアに聞こえるような環境を作ることが大切です。

ここでは、家庭でできる防音環境の整え方について説明します。

 

窓の対策

踏切や自動車、人の話し声など、「外の音が気になって眠れない…」と睡眠不足に悩む方は、賃貸住宅でも手軽にできる、以下の対策が効果的です。

 

・厚手のカーテン

遮音性が高く、外部の騒音を軽減します。カーテンを二重にすることで、より遮音効果を高めることができるでしょう。

 

・隙間テープ

窓枠とサッシの隙間を隙間テープなどで埋めることで、外部の音を遮断します。隙間テープには、スポンジやゴムなどさまざまな素材や厚みがありますので、ご自宅の環境に合わせて選びましょう。

 

壁の対策

室内のちょっとした音を抑えたい場合や防音環境をしっかり整えたい場合は、以下の対策がおすすめです。

 

・吸音パネル

壁に吸音パネルを取り付けるのも遮音効果があり、壁全体ではなく音が気になる場所に設置するのも効果的です。室内の音を吸収し、反響音を減らしてくれます。

 

・大型の本棚

壁際に大型の本棚を置くことで、音を吸収し、防音効果を高める効果があります。防音室のようにしっかりと遮音したい場合は、壁一面に本棚を設置するのがおすすめです。

 

床の対策

老人性難聴の方にとって、歩く際の足音や物音なども、聞こえにくさの原因になります。床の防音環境には防音マットがおすすめです。

 厚みのある防音マットは、床の衝撃音の緩和に効果があり、防音マットにラグを重ねることで、さらに遮音効果を高めます。

 防音マットには遮音等級があります。歩行音や落下音、家具の移動音などをより遮音したい場合は、遮音等級LL35ΔLL-6)と表示されているものを選びましょう。

転倒防止のため、クッション性が高いものや滑りにくい素材がおすすめです。

 

生活音対策

生活音を抑えることで、室内の防音環境を整えることができます。気になる振動や騒音がある場合は、以下の対策を試してみてください。

 

・ドアや出入口

ドアの下に隙間テープを貼ることで、ドアの開閉音が緩和する場合があります。ドアの衝撃音を軽減したい場合は、ゆっくりと閉めるドアクローザーが効果的です。

 

・家電製品の配置

洗濯機や冷蔵庫などの振動があり音が気になる家電製品は、壁から離して設置したり、振動を吸収する防振マットを敷いたりすることで、振動や騒音を軽減できます。

 

音環境を改善してより快適な生活を

「聞こえにくさ」は、年齢を重ねるごとに誰しもが経験する可能性のある悩みのひとつです。

音が聞こえにくいことで、日常生活への支障や社会交流の減少など、生活の質にも大きく影響します。今回ご紹介した適切な防音対策を行うことで音環境を改善でき、ストレスの軽減やより快適な生活につながるでしょう。

音環境の改善は、ご本人だけでなく家族や周囲の人の協力が不可欠です。老人性難聴に悩む方が安心して暮らせるように、生活空間に合った防音対策を進めていきましょう。