「端坐位(たんざい)」と「つかまり立ち」で変わる介護生活

在宅介護は介護される人の出来ることがほんの少し増えるだけで、介護の内容が変わり、ご家族の負担が大きく減ることがあります。それは、介護を行う人にとってのメリットばかりでなく、介護を受ける人にとっても大きなメリットとなります。

例えば、全ての動作に何らかの介助が必要な方でも「端坐位(たんざい)」や「つかまり立ち」ができるだけで、その生活は大きく変わると考えられます。具体的に、どのような面でどう変わるのか、一緒に見ていきましょう。

 

端坐位(たんざい)ってどんな姿勢?在宅生活への影響は?

坐位(ざい)とは、座る姿勢のことを指す言葉ですが、どんな風に座るのかによって別の言葉で言い表すこともあります。

端坐位は、ベッドや椅子などの端っこに足を降ろして座る姿勢のことを指します。健康な人なら何ら問題のない姿勢ですが、筋力や平衡感覚、関節がしっかり曲がることが必要で、介護が必要な方の状態によっては難しいこともあるでしょう。

 

本人にとっての端坐位のメリット

端坐位は、寝ている状態と比べると、呼吸がしやすいと感じる方が多いです。これは、胸郭の圧迫や横隔膜の位置が関係しており、特に呼吸器に病気がある方はその効果を感じやすいでしょう。また、横になっている姿勢よりも座っている姿勢の方が、脳が活性化しやすいというメリットもあります。

端坐位が安定すれば、座って過ごすことが増えるぶん、家族や友達と会話をしたり、好きなことをしたりできる時間が増えることにもつながるでしょう

 

家族にとっての端坐位のメリット

端坐位がとれるのと、そうでないのとでは、介護の負担が大きく違います。

例えば、ベッドに端坐位がとれるだけで、着替えの介助がとても楽になります。ベッドから車イスへ移乗する際も、安心して車イスをセッティングする心の余裕ができるでしょう。

また、トイレでは、ご本人をゆっくり座らせてあげることができ、たとえ少々時間がかかってもお互いに気にせず待つことができます。車イスを使って外出をする時に、「ずり落ちたりしないかな」と度々心配する必要もなくなるかもしれません。

 

つかまり立ちができることで在宅生活はどう変わる?

つかまり立ちとは、手すり等を支えにして、ご自分の力で立つことを指します。

つかまり立ちができれば、介護をする人は「抱える」「持ち上げる」介護をする場面が減ります。大人の体重を支え持ち上げるのはとても大変なことです。腰痛などに悩みながら介護している方にとって、とても嬉しいポイントでしょう。

つかまり立ちができれば、介護する人は車イスをセッティングして座る際にサポートするだけで済む場合も多いです。立つことが難しくてやむを得ずベッド上でおむつ交換をしたり食事をしたりしていた方は、ベッドから離れて食卓やトイレに行きやすくなり、ご本人もより気持ちよく過ごせるでしょう。

 

端坐位やつかまり立ちの安定で離床時間が増えた場合のメリット

ここまででも触れたように、端坐位やつかまり立ちの安定は、在宅生活の過ごし方に深く関わり、可能性を広げてくれるポイントでもあります。離床して活動的に過ごすことは体力や筋力を維持し、床擦れを予防し、心肺機能や消化機能を助け、認知機能の低下を防ぐなど、ご本人の健康面に良い影響を与えると言われています。

また、それは心の健康にもつながり、端坐位やつかまり立ちができることで自信がつき、「こんなことをしてみたい」「もっと元気に過ごしたい」「家族に負担をかけずに頑張りたい」といった前向きな気持ちにもなれるのではないでしょうか。

とはいえ、端坐位やつかまり立ちが不安定な方が、ひとりで練習を行うのは転倒の危険もありおすすめしません。日頃から、少しなら端坐位やつかまり立ちを行っているという方は、誰かに見守ってもらいながら少しずつ機会を増やしたり、「今日は10秒保ってみよう」など少しずつ時間を増やしたりすると良いでしょう。

端坐位やつかまり立ちをあまりしない方が、急に無理をすると健康を損ねたり、体に負担をかけすぎたりしてしまうことがあります。状態に応じて、医師やリハビリの専門職等に聞きながら、どのように進めたらご本人にとって負担が少ないのか確認した上で行いましょう

 

つかまり歩きを助ける手すり付きチェア「おつたいくん」が便利

当社の介護用家具「Care-ケア」シリーズの「Care-114-AC おつたいくん」は、背面部に伝い棒が付いている点が特徴です。自宅の食卓やリビングで椅子の周囲のスペースに余裕がないなど、椅子をたよりにして数歩歩く場面もあるでしょう。ひとりで歩けるけども、何かを触っておいた方が安心という方には、握ってつたい歩きができるこの椅子がオススメです。

もちろん、ご本人の状態によって、安全に使えるかどうかは変わってきます。リハビリや介護のプロなどにアドバイスをもらいながら、使用を検討されるのもおすすめです。

 

端坐位やつかまり立ちは環境面の整備も大切

端坐位やつかまり立ちを安全に行うには、環境面の整備も大切です。しっかり体重をかけられる手すりや、立ち座りしやすい椅子の高さ、座面の安定性など、注意しておきたいポイントもあります。こうした点は、介護のプロやリハビリのプロにアドバイスをもらうと安心です。

端坐位やつかまり立ちによって、在宅生活の可能性はグンと広がります。介護を受けるご本人と、そのご家族が、お互いに無理なく暮らせるように、状態に応じて端坐位やつかまり立ちの練習をしてみてはいかがでしょうか。