和室は身体に負担?高齢者に優しい和室の作り方
高齢の方の中には、「少々不便でも和室がいちばん落ち着く」「畳の上で生活をしたい」と考える方も少なくありません。しかし実際は、足腰の力や体力が低下してくると、和室は身体的に負担が大きいと感じることもあります。生活のしにくさ等の問題で改修を余儀なくされたり、介護する家族の負担を減らすためにベッドを使い始めたりする人もたくさんいます。
できるだけ本人の意思を尊重して、和室の良さを感じながら、身体的な負担を減らす空間づくりができると、本人だけでなくサポートする家族も気持ちよく暮らせるのではないでしょうか。そこで今回は、高齢者に優しい和室の作り方について解説していきます。
高齢者が和室で暮らすことの身体的な負担とは
高齢になり身体機能が低下すると、膝や腰に負担のかかる動作がつらくなってきます。例えば、正座や胡座は、膝や腰への負担を感じやすい姿勢です。和室では、基本的に畳の上で生活することとなるため、椅子を置かない限り正座や胡座で過ごすことになり、その負担感から徐々に起きて過ごす時間が少なくなる恐れがあります。
また、畳からの立ち座りと、椅子からの立ち座りとでは、明らかに畳からの立ち座りの方が動作としての難易度が高いです。若い人でも実感できるように、畳からの立ち座りはそれなりに筋力やバランス力を必要とします。
さらに、和室での生活は、家具の高さも全体的に低くなりがちで、立ち座り時に支えにならないことも多々あります。家具の支えが期待できない環境下では、バランスを崩しやすく転倒のリスクも増えるでしょう。
そして、畳や障子は断熱性が低く、冬場は体が冷えやすいというデメリットもあります。体の冷えから体調を崩すと、さらに和室での生活が厳しくなるかもしれません。
安心できる和室にするために
それでは、高齢の方も安心して過ごせる和室にするために、どのような工夫をすれば良いのか見ていきましょう。
床からの立ち座りによる身体の負担を減らす
畳に座布団などを敷いて座ると、どうしても低い位置から立つしかありません。和室に一般的な高さの椅子やテーブルを置きたくない場合は、座面高30~40cm程度の脚付きチェアを取り入れてみてはいかがでしょうか。その他にも、正座や胡座での姿勢の負担を減らすために、座椅子を使うのもおすすめです。
肘付きの椅子なら、立ち座り時の支えになり、バランスをとりやすくなります。椅子の座面はフカフカした柔らかいものではなく、適度な硬さがあった方が姿勢が安定しやすく立ち座り時も楽になるでしょう。
安心して身体を預けられる家具を選ぶ
低い位置からの立ち座りでは、支えとなる安定した家具があるだけで、負担を大きく減らすことができます。しっかりと体重を預けても動かず壊れないような家具を置きましょう。
家具の脚裏に滑り止めのゴムをつけたり、どっしりとしたローテーブルを置いたりするのもおすすめです。最近は、床からの立ち座りに便利な置き型手すりや立ち上がり補助具もあるため、こうした福祉用具も使いながらできるだけ安心して立ち座りができる環境を整えましょう。
視覚的な安心感を高める
和室に限ったことではありませんが、高齢者の部屋は明るくしっかりと足元が確認できる環境をつくりましょう。
照明は昼白色のライトを選び、メインの照明だけでなく間接照明やスタンドライトなどを活用して、暗くて見えない状態を作らないのがポイントです。照明の工夫だけでは不十分な場合は、目印となる家具や小物を置いて視覚的なガイドを設置するのもおすすめです。
「冷え」への対策
まず、窓からの冷えを防止するために、障子紙は断熱タイプに張り替えましょう。窓に貼れる断熱フィルムも併用すると、外の冷気の影響を和らげることができます。
そして、床からの冷えを防ぐために、断熱ラグや畳対応の防寒シートも活用しましょう。併せて、こたつや床暖房マット等で座って過ごす時間の快適性を高めると、日中に起きて過ごしやすくなります。高齢になると、足先の冷えも感じやすくなるため、温かさを感じる履き物も良いですが、滑りにくく引っ掛かりにくい素材のものを選びましょう。
床に敷くマットなどは、場合によっては移動時に足がひっかかる恐れもあります。滑ったり、ひっかかったりしないように、滑り止めマットの上に敷くなどして対策されることをおすすめします。また、こたつ等の暖房器具のコードも、足が引っ掛からないように壁に沿わせるなどの対応が必要です。
和室の安全性を高め、高齢の方にも優しい空間へ
高齢になると、和室での生活が徐々に難しくなることも珍しくありません。しかし、できるだけ慣れた環境で、安心して暮らしたいという気持ちも理解できますよね。本人の気持ちも尊重しながら、今の和室の安全性を高める工夫を行うことで、日々の暮らしが楽に行えるかもしれません。ぜひ、ご紹介したポイントを参考にして、高齢者に優しい和室を目指してみませんか。