「ひとりで座るのがこわい」—そんな気持ちに寄り添う環境づくり

足腰の力が弱くなったり、病気で一時的に体力が落ちたりすると、これまで当たり前に行ってきた動作の一つひとつに不安を感じることも少なくありません。特に、高齢になると、そうした不安も大きくなるでしょう。高齢になってから一度でも転倒を経験すると、「椅子に座る」ことそのものが、不安や恐怖を伴う場合もあります。

この読みものでは、ひとりで椅子に座ることに不安や恐怖を感じる方にとって、恐怖を感じにくくなる椅子とはどのようなものなのか、そして周囲の環境をどのように整えれば良いのか、について解説します。

 

「座るのが不安…」そう思ってしまう環境とは

悩む男性

足腰に不安があると、「座ったはいいけど、次に立てなくなるかもしれない」「もし、誰もいないときにひとりで転倒してしまったらどうしよう」そんな風に不安を感じる高齢者は少なくありません。椅子に座ってしまえば安心、と考えてしまうかもしれませんが、立ち座りの場面やその後のことまで考えると、椅子に座ることそのものに不安や恐怖を感じてしまう方も多いです。

ただ、この不安感は、単に身体機能の衰えばかりが原因とは限りません。若い世代の人でも、普段座り慣れていない椅子には少し慎重になるのと同様に、椅子そして周囲の環境などが不安感を増幅させることもあるのです。

例えば、以下のような椅子や環境下では、座ることそのものに不安を感じやすいでしょう。

・椅子がぐらついている

・肘掛けがない

・背もたれが浅い

・座面が低すぎる、高すぎる

・立ち座り時につかまったり支えになったりする場所がない

このように、椅子そのものが支えになりにくく不安定であったり、座面が合っていなかったりすると、ひとりで座るのが怖いと感じる可能性が高くなります。

それでは、どのような椅子や環境下であれば、安心して座ることができるのか、見ていきましょう。

 

安心を与える椅子とは?選び方のポイント

 「ひとりで座るのが怖い」と感じる方のために、どのような工夫ができるのでしょうか。椅子と周囲の環境に目を向けてポイントをご紹介します。

 

安心して座りやすい椅子とは

まずは、安心感をおぼえやすい椅子の特徴を見てみましょう。

・脚がすべりにくく安定感がある

・座面が広く、そのうえ座った時の姿勢も崩れにくい

・背もたれの高さや角度がちょうど良い

・しっかりとした肘掛けがある

若い人でも、グラグラと安定しない椅子よりも、しっかり安定している椅子の方が座りやすいと思うでしょう。足腰の力が弱い人にとって、安定感はとても重要です。

さらに、座面が小さすぎないことや、座った時の姿勢が崩れにくいこと背もたれが十分にあり快適であることも、座った時の安心感に大きく影響します。支えになる肘掛けがあると、座った姿勢を保持しやすくなるだけでなく、立ち座りの時にグッと力を入れやすくなり、安定した動作を行いやすくなります。

 

家具の配置や環境面も重要

立ち上がる老人女性

ひとりで座ることに不安がある方にとって、環境面を整えることも重要なポイントになります。以下のことに気を付けて、少しでも不安を減らす工夫をしてみましょう。

・椅子の周囲につかまれるものを置く

・椅子はいつも定位置に置く

・椅子の周りに物を置かない

・孤独感を感じにくいように配慮する

ひとりで椅子に座ることに不安がある方の場合、いつもと同じ動作で動けることは安心につながります。いつもと椅子の向きが違うだけで、必要な動作は変わり、慣れない動作を行うことで不安感は増します。椅子の位置は定位置にして、毎日同じ動作で座れることが、恐怖心を和らげてくれるでしょう。

また、椅子の周囲はスッキリと片付けて、特に足元には何もない状態にしておくことも大切なポイントです。何かにつまづいたり、踏んでバランスを崩したりしないように、整理整頓を心がけましょう。

さらに、椅子以外にも支えになるような家具を置いたり、常日頃からできるだけ孤独感を感じさせない関わりを心がけたりすることも、椅子にひとりで座ることへの恐怖心を軽減することにつながります。

 

本人の自信を高めることも不安感を和らげるためには必要

ひとりで座ることが怖いと感じている方の心に寄り添って、環境や関わり方の工夫をすることはとても大事です。一方で、本人の不安感を少しでも和らげるために、本人自身が自信をつけることも根本的な課題解決を考える上では重要になります。

できるだけ足腰の力が弱くならないように、できる範囲で運動を取り入れてみましょう。リハビリや医療、介護の専門家にアドバイスをもらいながら、自分に合った運動を行うのもおすすめです。

 

安心して座れる環境を整えよう

今回は、「ひとりで座るのが怖い」と感じる方のために、不安感や恐怖心を少しでも軽減できるような椅子や環境について解説しました。

実際に、どのような点に不安をおぼえるのかは、本人でないと分からない部分もあるかもしれません。まずは気持ちに寄り添って、丁寧に聞きながら、どのように工夫すれば不安感が軽減できるのか一緒に考えてみましょう。どんな対策をすれば良いのか分からない場合は、今回ご紹介した内容を参考に、椅子や環境を見直してみてはいかがでしょうか。