高齢者の「いつもの席」が心と体に与える影響とは

家の中に自分のお気に入りの定位置があり、そこでのんびりと過ごすのが日課になっている、という方も多くおられるでしょう。特に、外出の機会が減る高齢者にとって、リビングのソファやダイニングの椅子は1日の大半を過ごす「いつもの席」になりやすい傾向にあります。

いつもの席が決まっていることは、本人にとっては安心感をもたらし、自分だけのテリトリーとして意味をもつものです。いつもの椅子、いつものソファが変わることは、本人にとってはストレスとなることもあるため、簡単に変更したり見直したりすることはなかなか難しいかもしれません。

しかし、年齢を重ね身体の状態が変化してくると、見直しや変更が必要になることもあります。本記事では、「いつもの席」が高齢者に与える精神的なメリットと、そこに潜むリスクについてご紹介します。


「いつもの席」があることのメリット

高齢者にとって、「いつもの席」があることは、以下のようなメリットをもたらします。

心がやすらぎ落ち着く

 決まった場所に座ることは、お気に入りの場所に座ることでもあり、「ここは自分の場所だ」という安心感をもたらします。特に、認知機能に不安が出てきた高齢者にとって、自分の居場所にいることは大きな安心感につながります。


生活リズムが安定しやすい

 いつもの席が決まっていると、生活のルーティーンが定まりやすく規則正しい生活につながりやすいというメリットもあります。例えば、朝起きていつもの場所に座り、新聞を読んで朝御飯を食べるなど、同じ行動を繰り返すことで1日の時間感覚が維持しやすくなります。


本人が過ごしやすい環境を築きやすい

 いつもの席があると、手の届く範囲に必要なものを固定して配置しておくなど、生活の利便性を高めやすくなります。メガネや薬、リモコン、電話など、不可欠なものを置いておくだけで、家族に頼らずとも自分でできる範囲が広がるでしょう。


「いつもの席」が固定されすぎることで起こるデメリット

 しかし、いつも過ごす場所が固定されすぎると、以下のようなデメリットが生じる可能性もあります。

活動性の低下

 なにもかも座っている場所から手の届く範囲に物を置きすぎると、座りっぱなしになる恐れがあります。立ち座りの回数が減ると、筋力の衰えにつながり、トイレやお風呂などの日々当たり前に行っている動作すら億劫になってくるかもしれません。

 これは、筋力の低下がさらに活動性を低下させるという、悪循環につながります。高齢者にとって、こまめに動くことはとても重要です。


姿勢のクセの定着

 長時間同じ椅子に座り続けることは、特定の筋肉だけ緊張させ、骨盤周りの柔軟性が低下するなど、体が動きにくくなる要因にもなります。

 例えば、柔らかなソファにもたれるように座ると、骨盤は後傾し腰が痛くなる原因となります。内臓が圧迫され消化機能が低下したり、肺を圧迫して呼吸を浅くすることにもつながるでしょう。 

また、右側にテレビがあるなどの理由でどちらか一方に体重がかかるような姿勢を続けていると、体が歪み立った時のバランスも悪くなります。


「いつもの席」を見直してみましょう

 一度、高齢者の「いつもの席」を見直してみましょう。見直すにあたり、具体的なチェックポイントをご紹介します。


・足の裏はしっかり床についていますか?
・背もたれと腰の間に隙間は空いていませんか?
・椅子は立ち上がりやすい高さになっていますか?
・必要以上にテーブルの周辺に物が溢れていませんか?
・テレビや家族との会話で無理な姿勢を続けることはありませんか?


こうした見直しを行うと、その時の状態に応じた快適な環境が整いやすくなります。必要に応じて、家具を変更したり、クッションや足台などを活用したりして、工夫してみるのもおすすめです。また、手の届く範囲に置くものは最低限にとどめるようにしましょう。使用頻度の高いものから順に決めていくのも良いですね。

 さらに、「いつもの席」を複数つくるのもおすすめです。例えば、午前中はダイニングの椅子、午後は日当たりの良い窓際の椅子など、複数の居場所をつくることで、自然と活動性があがり気分転換にもなります。

 そのほかにも、「今日はいつもと違う種類のお茶にしてみたよ」「あっちの窓から綺麗な花が見えるよ」など、自然と体が動くような声掛けをして、少しずつでも動く機会をつくるのも効果的です。


「いつもの席」と上手に付き合うために

 高齢者にとって「いつもの席」を大切にすることは、これまでの人生や生活での安心感を尊重することにもつながります。

 大切なのは、席が固定されすぎることで起こるデメリットの影響をできるだけ受けないように工夫することです。今回ご紹介したポイントを参考にして、高齢者にとって大切な居場所を確保しつつ足腰が弱らないように取り組んでみてはいかがでしょうか。