介護が必要になる「前」にやっておく住環境の備え
介護が必要になる場面というのは、ある日ふいに訪れます。ちょっとした転倒や体調の変化、入院をきっかけに、これまで当たり前にできていた動作が急に難しくなる。そんな経験をされたご家庭は、決して少なくありません。
介護が必要になってから住環境を整えようとすると、家具をじっくり選ぶ余裕がなく、退院後にすぐ自宅へ戻れないといった状況も起こり得ます。「今の家のままでは生活が難しい」と気づくタイミングが、いちばん不安な時期と重なってしまうのです。逆に言えば、元気なうちなら、ご本人の好みやデザインを大切にしながら、じっくり家具を選ぶことができます。
この記事では、住まい全体を「5年後の自分」の視点で点検していくための考え方をご紹介します。
今の住まいを「5年後の自分」の目で見直す
今は何気なく使っている家具や間取りも、5年、10年と時間が経つにつれて、少しずつ使いにくく感じる場面が出てくるかもしれません。家具のひとつひとつを「5年後の自分」の目で見直してみると、見えてくることがあります。
椅子やソファ
毎日座る椅子やソファは、立ち上がりやすさがとても大切です。手を使わずに自然に立ち上がれるか、肘掛けがあって体を支えやすいか、座面が深く沈み込みすぎていないか。今は気にならなくても、足腰の力が少しずつ変わってくると、こうした点が大きく影響してきます。
テーブル
テーブルは、椅子との高さのバランスが重要です。高さを調整できるタイプであれば、将来椅子を替えたときにも合わせやすく、長く使い続けることができます。また、角が丸く仕上げられているものは、思いがけずぶつかってしまったときの安心感も違います。
ベッド、寝具まわり
寝具についても、今のうちに考えておきたいポイントがあります。布団での生活は心地よさがある反面、起き上がりや立ち上がりに大きな力を必要とします。将来を見据えて、少しずつベッドへの切り替えを検討してみるのもひとつの選択肢です。ベッドの高さは、腰をかけたときに足の裏が床にしっかりつく程度が目安。すぐ手の届く位置につかまれる場所があると、スムーズに起き上がることができます。
収納家具
毎日使うものが、かがんだり背伸びをしたりする場所にあると、それだけで体に負担がかかります。よく使うものは、腰から目の高さの範囲にまとめておくと、出し入れがぐっと楽になります。また、安全面への配慮も大切です。背の高い家具は転倒防止の固定をし、重い引き出しは軽量なタイプへの入れ替えを検討してみましょう。
カーペット、ラグ、カーテン

足元のカーペットやラグは、若いうちは何気なく使っているものですが、年齢を重ねるとつまずきの一因にもなります。端がめくれにくいもの、滑り止めのついたものを選んでおく、あるいは将来撤去しやすい状態にしておくと安心です。カーテンも、開け閉めが軽くスムーズに動くもの、遮光や断熱の機能があるものを選んでおくと、日々の暮らしが少し楽になります。
将来を見据えた家具選びのポイント
ここまで見てきたように、住まいの家具にはそれぞれ「将来使いにくくなりやすい場面」が存在します。立ち上がりに力がいる椅子、高さの合わないテーブル、起き上がりにくい寝具、出し入れが大変な収納家具などその例は様々です。
年齢を重ねた身体にやさしく寄り添えるかどうかという視点で考えると、どの家具を選ぶ際にも共通する重要なポイントが見えてきます。これから家具を新しく揃える場面では、次の4つの視点を意識してみてください。
高さや使い方を調整できるか
椅子とテーブルの高さのバランス、高さを調整できるベッド、そして位置を自由に変えられる棚など。どれも、これからの身体の変化に合わせて柔軟に対応できる家具を選ぶことが、長く快適に暮らし続けるための大切なポイントです。たとえば弊社のTS1テーブルのように、継脚で68cmと74cmの高さを切り替えられるものは、将来椅子を替えたときや、車椅子を使う場面になったときにも対応できます。
「支え」として頼れる安定性
椅子の肘掛け、ベッドサイドのテーブル、リビングのキャビネット。家の中の家具は、いざというときに体を預ける「支え」にもなります。つかまっても倒れない、寄りかかっても揺らがない安定感のあるものを選んでおくと、わざわざ手すり工事をしなくても、今のうちから家具がやさしくその役割を担ってくれます。
毎日のお手入れのしやすさ

汚れがさっと拭き取れる素材、軽くて持ち上げやすい構造、複雑な凹凸のないシンプルな形。こうした要素は、お掃除のたびに感じる小さな負担を減らしてくれます。介護が始まってからは、家具のお手入れのしやすさが、におい対策や衛生面での安心に直結します。
やさしい形と、長く飽きないデザイン
角の丸いテーブルや、引っかかりのない椅子。そうした安全に配慮された家具は、日々の暮らしにさりげない安心感をもたらしてくれます。さらに、流行に左右されないシンプルなデザインを選んでおけば、年月を重ねても住まいに自然に馴染み、末永く愛用することができます。
加えて、家具の配置にも少しだけ目を向けてみてください。
・よく通る動線上にしっかりとした家具を置く
・重く動かしにくい家具は軽量なものに替えておく
・使う頻度の低い家具を減らして通路の幅を確保する
・各部屋にひとつは「腰をかけられる場所」を用意しておく
こうした小さな工夫が、家具選びの効果を一段と引き立ててくれます。
小さな見直しが、未来をやさしく支えてくれる

住環境の備えというと、つい大がかりなことを思い浮かべてしまいがちですが、本当に大切なのは、家具をひとつ替えてみる、配置をほんの少し見直してみる―そんなちょっとした工夫です。
元気な今だからこそ、ご本人の好みやライフスタイルを大切にしながら、ゆっくりと家具を選ぶ時間を持つことができます。それは、将来の介護への備えであると同時に、「これからも自分らしく心地よく暮らしていくため」の大切な準備でもあります。
今日からすべてを整える必要はありません。気になるところから、ひとつずつ始めてみる。その小さな積み重ねが、5年後、10年後のご自身とご家族の毎日を、きっとやさしく支えてくれるはずです。
