椅子からの“ずり落ち”を防ぐために家庭でできる対策とは

高齢の方が椅子や車イスに座っている時、時間が経つにつれてだんだんと姿勢が崩れ、ずり落ちてしまうことがあります。特に、全身の筋力や体力が低下してくると、自分で姿勢を保持する力も弱くなるため注意が必要です。

 椅子からのずり落ちは、場合によっては骨折や打撲といった怪我につながる恐れもあり、決して軽視できるものではありません。また、姿勢が崩れても直さないでいると、誤嚥や呼吸のしづらさ、床擦れなどのリスクも出てきます。本記事は、高齢者が椅子からずり落ちてしまう原因そして、すぐに実践できる対策についてご紹介します。


ずり落ちてしまう原因とは?

 高齢者の椅子からのずり落ちの原因は、「体を支える力が足りない」ことが大きく関係しています。つまり、正しい姿勢を維持するための筋力の低下や疲労が根本的な原因です。

 椅子に座ることはさほど体力を消耗しないと思われがちですが、背筋を伸ばして座り続けるには、腹筋や背筋などの力が必要です。これらの筋肉が低下すると上体をまっすぐに起こすことが辛くなり、背中を丸めたりお尻を前に滑らせたりといった筋肉をあまり使わない楽な姿勢をとろうとします。こうした姿勢のずれが、椅子からのずり落ちにつながります。

 しかし、原因はこれだけではありません。個人の問題だけでなく、次のような環境の影響も椅子からずり落ちてしまう要因となります。


座面が滑りやすい

 例えば、椅子の素材の問題です。座面がつるつるとした素材でできている場合、着ている衣服との摩擦力が少なければお尻を特定の位置に固定しにくくなり、お尻が前方へと滑り出してしまうリスクが高まります。


足の裏が床についていない

 椅子の座面が高すぎることで、足の裏が床についていない場合、姿勢を維持するのが難しくなります。椅子に座っている時の足の裏は、床につけることで体が前方へ滑ろうとする力を食い止めるストッパーのような役割を果たしています。

 このストッパーが機能しなければ、上半身の重みがすべてお尻にかかってしまいます。姿勢が安定せず体力を消耗してしまい、足の裏というストッパーがないため徐々にお尻が前方にスライドしていきます。


背中が支えられていない

 椅子の座面が大きすぎて太ももの長さよりも背もたれまでの位置が深すぎたり、背もたれの角度が後ろに倒れすぎたりしていると、腰と背もたれの間に大きな空間が生じてしまいます。この状態では、骨盤が後ろに倒れてしまい、重心が後方へと移動します。

 背中は背もたれに寄りかかろうとする一方で、一番重いお尻から腰を支えることができないため、お尻だけが前に押し出されるような力が働き、前へとスライドしやすくなります。


高齢者の椅子からのずり落ちを防ぐ対策

 ここからは、高齢者の椅子からのずり落ちを防ぐために、ご家庭でできる対策についてご紹介します。

座面の滑りを止める

 まずは、お尻が滑りにくくなるように、滑り止め機能のある素材を使って対策しましょう。100円ショップなどで販売されている、食器棚やマットの下に敷く網状の滑り止めシートが便利です。これを座面に敷くだけで、かなり滑りにくくなります。


背もたれと腰の隙間をなくす

 大前提として、椅子に座るときはお尻が椅子の座面の一番奥にくるようにしましょう。深く座っても背もたれと腰に隙間ができる場合は、丸めたバスタオル等を腰骨の少し上あたりに当てましょう

 こうすることで、腰が前に押し出されるようにサポートされ、骨盤がまっすぐたちやすくなります。


足の裏をしっかり床につける

 足の裏を安定させてストッパーの役割を果たせるように、椅子の高さを調節したり、椅子そのものを見直したりして対策しましょう。既存の椅子の高さを調節できない場合は、足台を置くのがおすすめです。フットレストは市販されていますが、不要な雑誌などを束ねてガムテープでしっかり固定するなどして代用することもできます。

 足の裏がしっかり安定すると、踏ん張る力が生まれてずり落ちを防ぎやすくなります。


机の高さを見直す

机が低すぎる場合、自然と何かをしようとするときに覗き込むような姿勢となり、背中が丸まって骨盤が後ろに倒れやすくなります。できるだけ目線は無理のない高さにあげて、上体が起きるように調整しましょう。


適度に休憩をする

どんなに良い姿勢でも、長時間同じ姿勢でいることは大変です。筋肉は疲労し、姿勢は崩れてくるでしょう。高齢者の体力にあわせて、適宜横になって休んだり、立ち上がって背伸びをしたりして筋肉の緊張をほぐすことも大切です。自分で姿勢のずれを修正できない場合は、座り直しのサポートをしてあげましょう。

 

まずは座る環境のチェックから始めよう

 椅子からのずり落ちは、筋力の低下だけでなく、座面や高さ、背もたれとの隙間など物理的な条件が関係することも少なくありません。また、高齢者に限らず、崩れた姿勢のまま座っていると、子どもでも椅子からずり落ちることはあります。

 椅子からのずり落ちを防ぐ基本は、体を支えられる環境を整えることです。今回ご紹介したポイントを見直して、課題がある部分から対策してみてはいかがでしょうか。