食卓につく動作を少しラクにするポイント
食卓につくとき、高齢のご家族が椅子を一度で引けず、何度も少しずつ動かしていることはありませんか?また、椅子を十分に引けないため、体を横向きにして狭いすき間に入り込んでいる姿を見かけることもあるかもしれません。
実は「座る」ということ自体はできても、
・椅子を引き出す
・体を滑り込ませる
・座ったあとに位置を整える
といったひとつひとつの小さな動作が、大きな負担になっていることがあります。これは食後に席を離れるときも同じです。
こうした出入りのしにくさは、ご本人の力だけが原因とは限りません。椅子の重さや床との滑りやすさ、テーブルの脚の形など、家具環境が影響しているケースも多くあります。
今回は、座ってから席を立つまでの「動作の流れ」に注目して、快適な椅子とテーブルを見直すポイントをご紹介します。
食卓への出入りを一連の動作で見る

まずは「どの動作で困っているか」を確かめます。食卓についてから席を離れるまでには、次のような動作があります。
・椅子を後ろへ引く
・椅子とテーブルの間へ身体を入れる
・腰を下ろし、座る位置を整える
・(食後に)椅子を後ろへ動かす
・立ち上がって席から出る
たとえば、椅子を引きにくい場合は「椅子の重さや床との摩擦」、身体を入れにくい場合は「周囲の広さやテーブル脚の位置」が関係しているかもしれません。
ご家族がいつも自然に手伝っていると、ご本人が「どの段階で困っているか」が見えにくくなりがちです。介助をやめる必要はありませんが、普段のサポートを続けながら「どの動作で手助けが必要か」を少し意識して観察してみましょう。
小さな変化から使いにくさに気づく
困っている動作を特定するために、日頃の食卓で次のような動きがないかチェックしてみましょう。
・椅子を一度に動かせず、小刻みにずらしている
・身体を横向きにして座っている
・座った後に、椅子をテーブルへ寄せられない
・半分立った姿勢(中腰)で椅子を動かしている
・食後、家族が来るまで席で待っている
こうした動きがあっても、すぐに筋力低下と決めつける必要はありません。「引くときと立つとき、どっちが大変?」などと尋ねて、ご本人の実感も聞いてみましょう。外から見える動作とご本人の感じ方の両方を合わせると、見直すべきポイントがはっきりします。
椅子の重さと床との相性を確かめる
しっかりした木製椅子や肘掛け付きの椅子は、重くて動かしづらいことがあります。かといって「軽ければ良い」とも限りません。
軽すぎる椅子は、腰を下ろすときや立ち上がるときに滑って動いてしまい、転倒につながる危険があるからです。「動かしやすさ」と「座るときの安定性」の両面で選ぶことが大切です。
脚裏と床材の相性を見る

椅子の脚裏も確認してみましょう。保護パーツのすり減りや外れ、汚れの付着があると、スムーズに動かせなくなります。また、同じ椅子でも畳、カーペット、フローリングなど、床材によって動かしやすさは大きく変わります。
動かしやすくするために、脚裏に滑りやすい部材(保護フェルトなど)を貼るのも有効です。その際は、脚の形や太さ、床材に合った製品を選びましょう。取り付けた後は、動かしやすさだけでなく「立ち座りの際に滑りすぎて危険がないか」まで忘れずに確認してください。
椅子とテーブルの組み合わせを確かめる
次に、椅子とテーブルの組み合わせを見ます。テーブル脚や天板の形が、出入りを妨げていることもあるためです。
テーブル脚と椅子脚がぶつかっていないか
四本脚のテーブルの場合、椅子の脚と当たって十分引き出せないことがあります。脚同士がぶつかっていないか、ご本人の足元にテーブル脚が出て邪魔になっていないか確認しましょう。
肘掛けが天板や幕板に当たっていないか

肘掛け付きの椅子では、肘掛けが天板やその下の板(幕板)に当たり、テーブルの近くまで寄せられないことがあります。その結果、食事中に前かがみになってしまう場合もあります。そのため、椅子単体の使いやすさだけでなく、普段使うテーブルと組み合わせた状態で確かめることが大切です。
また、椅子を動かすときの姿勢も確認してみましょう。片手をテーブルについて身体を支えながら、もう一方の手で椅子を動かしている場合は、立つ姿勢を保つこと自体が負担になっている可能性があります。
テーブルは、身体を支える手すりとして作られたものではありません。体重をかけると、テーブルが動いたり、バランスを崩したりするおそれがあります。テーブルにつかまらないと椅子を動かせない様子があるときは、椅子を軽くするだけでは十分に解決できないことがあります。安全な動き方や必要な支えについて、普段相談している介護・福祉の専門職などに相談しましょう。
今の食卓で小さな見直しを試す
原因が見えてきたら、買い替える前に「すぐ元に戻せる小さな見直し」から試してみます。
・椅子の後ろや横の邪魔な物を移動する
・テーブル脚とぶつかりにくい席に変えてみる
・脚裏や床を掃除し、パーツの状態を確認する
・隣の椅子との間隔を見直す
席を替える際は家族だけで決めず、必ずご本人にも相談しましょう。「テレビが見やすい」「家族の顔が見える」など、その席を選んでいる理由があるかもしれないからです。いつもの席を変えることが負担になる方もいるため、本人の気持ちを確かめながら進めます。
調整した後は、食卓へ入るときだけでなく、食後に席から出やすいかまで確認します。一度にいくつも変えるのではなく、一つ試して合わなければ元に戻すようにすると、何が影響していたのか判断しやすくなります。
調整しても難しいときは別の椅子も考える

今の食卓を調整しても出入りしにくい場合は、椅子を大きく引かずに座面の向きを変えられる回転椅子を設置するのも選択肢の一つです。
ただし、回転椅子が誰にでも合うわけではありません。座るときや立つときに不意に回ってしまわないかなど、安全性の確認が必要です。
キャスター付きなどの動かしやすい椅子も、立ち座りの際に勝手に動くリスクがあります。「動かしやすさ」だけでなく「立ち座り時の安定性」も含めて検討し、できれば自宅で試して食事前後まで問題なく使えるかを見極めましょう。
椅子とテーブルを一緒に見直そう
食卓への出入りが難しくなったときは、まず一連の動作のうち、どこで困っているかを確認します。次に、椅子の重さや脚裏・床材の相性を確認し、それでも解決しなければテーブルとの干渉(脚や肘掛け)を確かめます。そのうえで、物を移動したり席を替えたりと、小さな調整をひとつずつ試してみてください。
本人が自分で行える動作をできるだけ保ちながら、必要なところだけを家族が支える視点も大切です。本人にも感じ方を聞きながら、毎日の食卓で無理なく続けられる環境を一緒に整えていきましょう。
