高齢者の「引きこもり」を防ぐための工夫とは?

高齢者の「引きこもり」は、心と体の両方に悪い影響を及ぼし、介護のリスクを高めたり死亡リスクが増えたりするといった問題があります。要介護になっても、できるだけ引きこもりを防いで他者と関わる機会をつくるなどして、活動的な生活を送ることが介護予防につながります。さまざまな不安があるかもしれませんが、病気や体力などと上手に向き合いながら外に出る機会をつくることが大切です。できれば高齢者本人が、前向きに外出したくなるような環境をつくり、一生懸命促さなくても良い状態にしたいものですね。今回は、「引きこもり」を防ぐための住環境の工夫について見ていきましょう。

 

なぜ高齢者の引きこもりが問題なのか

高齢になると、どうしても外出の頻度は減り、家で過ごす時間が増えがちです。それでも、一般的な日常生活を送っていれば外出する機会は少なからずあるでしょう。しかし、徐々に足腰の力が弱くなり体力が落ちてくると、外に出ることが億劫になります。

すると、体を使わないことでさらに筋力は落ち、体力も落ちてしまいます。やがて、家の中での移動や排泄といった日常生活に不可欠なことを行う力も衰え、特別な病気による制限や障害がなくても、引きこもりによって介護が発生する可能性が高まります

さらに、引きこもりによって社会とのつながりがなくなると、気持ちが落ち込みがちになり、抑うつのリスクも高まると言われています。社会的な孤立は心と体の両方に悪影響を及ぼすことが分かっており、介護の必要度合いに関わらず引きこもりを防止することが健康につながる第一歩と言えるでしょう。

 

「外出」は大袈裟でなくても良い

「引きこもりの解消」と聞くと、少しハードルの高さを感じる方もいるのではないでしょうか。高齢者と暮らすご家族なら、「どこかに一緒に連れて行かなきゃならない」と負担に思うかもしれません。

しかし、引きこもりの解消は、さほど大袈裟に考えなくても大丈夫です。例えば、近所を散歩する、庭先の手入れをする、地域のお祭りを見に行く、近所の友達の家にお茶を飲みに行く、という程度でも良いのです。もし、介護が必要な状態であまり長く歩けない、屋外の外出は転倒のリスクがあり不安という場合には、郵便ポストに配達されたものを取りに行くなど、高齢者ひとりで不安なく動ける範囲でも大丈夫です。介護の必要がある方は、介護サービスもしっかり活用しましょう

高齢者と暮らすご家族が、たまに時間がある時にドライブがてら景色の良い場所に行ったり、買い物に付き添ったりするのもおすすめですが、そう毎日行うわけにもいきませんよね。あまり大袈裟に考えすぎず、高齢者の引きこもり防止についてできることから始めていきましょう。

 

高齢者の「引きこもり」を防ぐ工夫

高齢者の引きこもり防止は、自分から「動いてみよう」と思える環境づくりが大切です。動くことが億劫にならない環境を整えることで、自然と体が動きやすくなり、家族としても促しやすくなります。では、具体的にどのような工夫ができるのでしょうか。一緒に見ていきましょう。

 

室内での立ち座りを変える

 一度座ってしまうと、それから立ち上がって動くことが面倒になりますよね。これは、高齢者でなくても言えることかもしれません。特に動くことが難しくなってきた高齢者は、なんとか座った位置から手に届く範囲で物事を済ませたくなります。

一度、リビングの椅子や机の高さを確認してみましょう。もし、ローテーブルにソファという組み合わせなら、思い切って生活の高さを変えてみるのも1つの方法です。低い位置からの立ち座りや、柔らかい座面からの立ち座りは、なかなか負担の大きい動作です。一般的な椅子と机に変えると、少ない負担でスムーズに立ち座りできるようになります。それに伴って、テレビの高さを変えるなども必要になるかもしれませんが、より介護が必要になるといずれ検討しなければいけなくなります。

 

できればドアはスライド式に

室内での移動は、ドアの種類が安全性を高めることもあります

例えば、建て付けの悪い襖を開けようとすると、勢いあまってバランスを崩してしまうこともありますよね。また、ノブで押したり引いたりして開けるドアは、特に「引く」時にバランスを崩しがちです。

住居の環境やリフォームに使える予算によっては難しいかもしれませんが、横にスライドできるドアなら開閉しやすく、たとえ車イスを使用する場合でも便利です。

 

玄関まわりの不安をなくすのも大事

家の中で一番大きな段差があるのはどこでしょうか。恐らく多くの場合、玄関ではないでしょうか。玄関の上がり框が高くて、行き来に不安がある場合、玄関さえクリアできれば「ちょっと庭に出てみようか」という意欲が増すかもしれません。

だからといって、大がかりな工事は必要ありません。たった1つの手すりをつけるだけで、玄関での行動が楽になったという方はたくさんいます。また、介護保険を使えば、頑丈な両手すりがレンタルで設置でき、車イスの方は昇降機のレンタルも可能です。しゃがんで靴を履くことが難しい場合は、椅子をひとつ設置するだけで安全に行えるようになるでしょう。

 

 

高齢者の引きこもり防止は環境面を整えることも大切

「ちょっと動いてみようか」という意欲は、体力や気力、足腰の状態などと結び付いています。引きこもりが続くと、誰でも筋力は衰え、体力も落ちます。若い人に比べて、高齢者の場合はその影響を大きく受けます。動けなくなってきたからという理由で引きこもると、悪循環を招いてしまうのです。まずは、リビングなどの環境を見直して、できるだけ動くことが億劫にならないような工夫をしてみてはいかがでしょうか。