高齢の方の生活を「疲れにくく」する家具の配置術
高齢になると、体力や筋力が低下したり、病気の後遺症や怪我で動きにくくなったりして、家の中での動きが難しくなることもあるでしょう。動くことに疲れを感じてしまうと、徐々に動く量が減り、より体力や筋力の低下を招く恐れがあります。これからの健康的な生活や自分でできることを継続するためには、できる範囲で動くことも重要です。
そこで今回は、高齢者が疲れにくい生活を送るための、家具の配置術についてご紹介します。
動線は短くシンプルにする
まず、安全に移動ができるように、できるだけ部屋を片付けて動きやすい環境を作りましょう。床にたくさん物があると、足がひっかかったり、無理に避けようとして転倒するリスクが高まります。そして、方向転換など細かな動作が少なくなるように、動線を遮るような家具等は移動させて、シンプルにまとめましょう。
場合によっては、高齢者の部屋をトイレの一番近くにするなど、家族間での部屋の変更も有効です。居間や玄関、トイレ等への移動距離が長く、疲れてしまう場合には、途中で休めるベンチ・椅子を設置してみてはいかがでしょうか。
高さと視線に合わせた家具の配置
高齢者の場合、座ったり横になったりして過ごす時間が増えます。移動するには、椅子やベッドからの立ち座り動作が必要となりますが、立ち座りに負担を感じると「動いてみよう」という意欲がわきにくく、当然ながら活動量は減ってしまうでしょう。 一度、ベッドや椅子の高さや位置を見直して、できるだけ疲れない高さ・位置にセッティングし直すのもおすすめです。
さらに、高齢になると腰が曲がり、これまで使っていた家具の高さが合わなくなる可能性もあります。高い位置の扉や引き出しを開け閉めしたり高い位置に収納されているものを取ろうとしたりすると、無理に手を伸ばさなければならず、この動作が疲れを招くこともあるでしょう。
暮らしの中で腰を曲げ伸ばしすることは良い運動にもなりますが、頻度が多すぎれば負担になるかもしれません。よく使う物は取り出しやすい場所に収納するなど工夫してあげましょう。
手の届きやすい場所によく使うものを置く
テレビやエアコン、照明等のリモコンや、保湿クリーム等のボディケア商品など、毎日頻繁に使うものに関しては歩かなくても手が届く場所に置いておくと良いでしょう。
ナイトテーブルやサイドテーブルを上手に活用して、ベッドの脇や居間の椅子の横などに高齢者専用の物を置くことで、その都度動いて疲れたり、疲れるからといって何もしないといった状態を防ぎやすくなります。
高齢者は水分不足になりやすいため、こうしたテーブルにお茶やお水などの水分を置いておくのもおすすめです。
動かしやすい家具の選定
部屋が狭いなどの理由で、家具のレイアウトを工夫しても動線が確保しにくい、収納が使いにくいなどの課題が残る場合は、キャスター付きの家具を取り入れてみてはいかがでしょうか。
例えば、季節外れの洋服を仕舞っているタンスは、ふだん開け閉めする頻度が低くなりますね。こうしたタンスの前にキャスター付きの台や棚などを置いても、さほど邪魔にはなりません。必要な時には軽い力で移動させることができ、さほど高齢者の負担にはなりにくいでしょう。
ただし、キャスター付きの家具を支えにして立ち座りや歩行をしようとすると、バランスを崩し転倒するリスクが高まるため、その点には注意が必要です。咄嗟に手を伸ばしがちな位置に置く場合は、しっかりロックがかかるものを選び、移動させない時には固定させておくことをおすすめします。
転倒予防につながる家具配置
歩行が不安定になると、何もつかまるところがない場所を歩くより、壁や手すり等の支えがある場所を歩く方が安心感があり、疲れにくくなります。要所に支えとなる家具を設置しましょう。
壁やトイレ等の手すりは、比較的簡単に設置することができます。その他には、ドアの開け閉めをする際にバランスを崩さないよう支えるための手すり、玄関の上がり框を安心して上り下りするための手すりも検討してみてはいかがでしょうか。手すりが設置できない場所には重量のある家具を配置して、掴めるようにしておくと良いでしょう。
疲れにくい家具の配置で家の中の動きを快適に
ちょっとした家具の配置や選定で、高齢者が疲れにくい空間をつくるポイントをご紹介しました。家の中ではできるだけ安全に、そして快適に過ごせることで、「疲れるから動かない」「億劫だから動きたくない」という気持ちも生まれにくくなります。また、疲れにくい家具配置にこだわることで、転倒のリスクを防ぎやすくなるでしょう。
ふだんはあまり気にならない家具配置も、客観的に見ることで問題点が浮かんでくるかもしれません。一度、この機会に高齢者に優しい家具配置や環境になっているか、チェックしてみてはいかがでしょうか。