高齢の方が「暮らしやすい」と喜ぶ部屋作りのポイント
高齢になると、これまで難なく行えていた動作が不安定になったり時間がかかったりして、慣れ暮らしていた環境でも不便になることは珍しくありません。家の中で自室をうつしたり、家具を変えたりすることもあるでしょう。大切なのは、高齢になっても暮らしやすく安全に過ごすことです。そのために、変更すべきことは変更し、喜ばれる部屋づくりのお手伝いをしてあげてはいかがでしょうか。今回は、高齢の方が喜ぶ部屋づくりについてご紹介します。
高齢者向けの部屋は位置・快適性・安全性をチェック!
高齢の方が暮らしやすい部屋で、主に考えるべきなのは、位置・快適性・安全性の3つです。それぞれ、もう少し詳しく見ていきましょう。
お部屋の位置と家の中の導線を考える
足腰が弱くなってくると、2階よりも1階の方が何かと安心ですね。さらに1階でも、できるだけトイレに近い位置に部屋があると、「遠すぎて間に合わない」という状態を防ぎやすくなります。
同様に、リビングやダイニングに近い位置にあると、お部屋から積極的に出て家族と過ごす時間が増え、ベッドから離れて過ごす時間も増えますね。たとえお部屋にいたとしても、人の集まりやすい1階に部屋があれば寂しさを感じにくくなるでしょう。
ただ、物音や振動に敏感でストレスになってしまう方は、プライバシーを確保して周囲の音が気にならないような場所に部屋を置いてあげるのも1つの方法です。
快適な空間をつくる
換気がしやすく、日光もほどよく射し込むような窓がある部屋がおすすめです。窓があることで冬場に寒くなりすぎる場合は、窓とベッドの位置に気を付けたり、外気温が伝わりにくい対策をしたりして対処しましょう。
温度や湿度が調節できる家電を適宜使うことや、衛生的に保てるよう配慮することも大切です。汚れが落ちやすい家具や道具を使ったり、不快な臭いがこもらないように空気清浄機を用いたりするのも良いでしょう。
また、電気の明るさにも注意が必要です。高齢になると、明るいところから急に暗いところへ移動するとき、目が慣れるまでに時間がかかるようになります。部屋の中と外が同じくらいの明るさであるように調節し、一般的には明るめの照明が好ましいでしょう。
安全性に配慮する
高齢の方の部屋づくりは、やはり安全性にも気を付ける必要があります。安全な空間なら、結果的に本人がヒヤッとするような出来事も起こりにくくなり、喜ばれることでしょう。
滑りにくい床にする、足が引っ掛かるようなものは置かない、ところどころに手すりや支えになる家具を置くなど、安全性を高めるポイントはたくさんあります。当然ですが、床には物を置きっぱなしにせず、片付けておくことも重要です。
その他
畳の上に布団を敷いて寝ることに慣れている方も、いつしか床からの寝起きがツラくなるかもしれません。本人の状態に応じて、ベッドの導入も検討すると良いでしょう。
また、椅子などの家具は本人の背丈に合うもの、使いやすいもの、掃除が簡単なものがおすすめです。デザインを重視するのではなく、機能性や使い勝手にこだわりましょう。多くの方は、木製のナチュラルな素材を好まれるようです。
高齢の方のための部屋づくりは本人と一緒に行う
よくありがちな失敗として、本人の意見をあまり聞かずにレイアウトを変更したり掃除や整理をしたりして、本人が怒ってしまい家族との関係性が悪くなることがあげられます。
突然、病気になったり介護が必要になったりすると、家族は慌ててしまって本人の意見を聞かずに良かれと思うことをやってしまうのは、珍しくありません。特に、入院や施設入所を経て自宅に戻る要介護者を迎えるときは、十分な打ち合わせもできず、つい家族の気持ちを優先して部屋づくりをしてしまいますよね。
ただ、勝手に部屋を変えられたり物が捨てられたりすることに、怒りを感じるのは自然な感情です。できるだけ、本人の同意を得て意見を取り入れながら、少しずつ部屋づくりを始めていきましょう。
不用品がたくさんあっても、一度に大量に捨てない
「断捨離」や「終活」という言葉が流行り、自分自身で物を整理し少なくするよう心がけている高齢者もいます。しかし実際は、物が捨てられなかったり、整理は家族に任せるつもりで生活したりしている高齢者が圧倒的に多い気がします。
若い人からすると、高齢の方の部屋づくりのために、「この際だから、要らないものは全部捨ててしまおう」と一念発起する気持ちもわかります。ただ、これは要注意。本人が同意したとしても、一気に慣れ親しんだものがなくなると、喪失感をおぼえて気持ちが落ち込む可能性があります。
高齢の方が喜ぶ部屋づくりは一緒に行おう
介護が必要な方の場合、専門的な見地から快適性や安全性を確保する必要も出てきます。すでに介護サービスを受けている方は、専門職の意見も取り入れると安心です。高齢の方の部屋づくりは、何より本人の気持ちが大切です。勝手にガラッと変えてしまわずに、本人の意見もしっかり聞きながら考えていきましょう。