転倒を防ぐ! 高齢者の理想的な立ち上がり方とは

転倒を機に、これまでサポートなく暮らしていた方が要介護状態になったり、介護が必要な方の要介護度が高くなったりすることは、決して珍しいことではありません。動くことは介護予防のために必要不可欠ですが、動けば動くほど転倒のリスクは高まります。そのため、出来るだけ転倒をしないように注意をしながら、体を動かしていくことが重要です。ここでは、転倒事例に多い「椅子からの立ち上がり直後の転倒」を予防するためにどんな工夫ができるのか、理想の立ち上がり方のポイントとともに見ていきましょう。

 

要介護者が家で転倒しやすい立ち上がりの場面とその理由

 高齢者が家の中で転ぶのは、歩いている最中ばかりではありません。食卓の椅子やリビングの椅子、ベッド、トイレなど、座った状態から立ち上がっていざ歩こうとした時に転倒するケースも非常に多く見られます

 なぜ、このような転倒が起こるのか不思議に思うかもしれませんね。人それぞれの理由はあるものの、主に以下の原因が関係していることが多いようです。

 

バランスがとりにくい

 リビングや食卓の椅子の環境をイメージしてみましょう。立ち上がってどこかに向かう時、椅子と机の脚に引っ掛からないように注意しながら少しだけ横に移動して、歩き出したい方向へ向き直りますよね。この細かな動作や小さい範囲で体の向きを変える動作は、体が不自由な方にとってはバランスを崩しやすく、なかなか難しい動作でもあります。

 立ち上がりは体の重心の移動を伴うため、バランス感覚が鈍くなってきている方にとっては転倒リスクの高い動作であり、注意が必要です

 

姿勢の悪さ

 椅子から立ち上がる時、私たちは無意識にまず体の重心を前に倒して足の裏にしっかりと力が入るようにしています。しかし、高齢になると背中がかがみ、体を前に倒して重心を移動させ準備を整えるのに時間がかかります。十分に準備が整った状態になっていないにも関わらず立ち上がろうとすると、尻餅をついたりバランスを崩して転んだりしやすくなります。

 

筋力の低下

 立ち上がりを安定させるには、お尻や太ももなどの筋肉も必要です。高齢になると、筋力が弱くなりやすいため、日頃から体操などをして筋肉を鍛えておく必要があります。

 

関節の曲げ伸ばしが苦手になる

 膝や足首、股関節など、関節の曲げ伸ばしが難しくなると、バランスを崩しやすくなります。

 

 

家庭内で立ち上がり時の転倒を防ぐには

 立ち上がりの際の転倒を予防するために、どのような方法があるのでしょうか。

 

立ち上がる時は椅子に浅く腰かけなおす

 深く座っている状態から立ち上がろうとしても、なかなか踏ん張りがきかず難しいでしょう。立ち上がる前は、まず浅く腰かけなおして前屈みの姿勢をとりやすくし、足の裏でしっかりと踏ん張れる状態にしましょう

 

安定したものを支えにする

安定したものを支えにする

 机が目の前にある場合は、椅子から立ち上がったあと机を手のひらで上から押すようにして支えると、バランスをとりやすいです。方向転換が必要な時、しっかりとした支えが必要なら、机や体重がかかっても倒れないような家具などを活用したり、福祉用具を使用したりするのも1つの方法です。

 

座面の高さを調節する

 意外と盲点になりやすいのが、座面の高さです。トイレや椅子に座ったとき、足の裏が床につかずブラブラしていませんか?立ち上がりを安定させるためだけでなく、座った時の姿勢を保つためにも、座面の高さを調節して足裏がつくようにしましょう。

 

体操や運動をして筋肉を鍛える

 筋力の低下は運動不足を招き、転倒の危険性を高めます。運動不足によって起こるリスクは転倒だけではなく、介護予防の観点からも非常に重要なポイントです。だからといって、スポーツジムのような場所で鍛えなくても大丈夫。椅子に座ったまま行える体操をこまめに行うだけでも介護予防につながります。簡単にできる体操をいくつかご紹介します。

 

➀背筋を伸ばす体操

 ・椅子に座り背筋を伸ばす。そして両手を伸ばして指を組み、ゆっくりと上げて10秒くらいキープする

背筋を伸ばす体操

 

②足先と足首の体操

 ・椅子に座ったままつま先を上げ下げする

・椅子に座ったままかかとの上げ下げをする

・椅子に座り片足だけあぐらをかくように持ち上げ、足首を回したり上下に動かしたりする

・背筋を伸ばして座り、だんだんと両手を足のつま先に届けるように体を倒し、5秒キープする。

足先と足首の体操

 

③お尻の体操

 ・椅子に座り、手は腰に。片方のお尻を浮かして少し前に移動し、反対も同様に行う。前後3往復くらい行う。

・椅子に浅く座り、両手は膝に。足を少し後ろに下げて、体を前傾させてお尻を少し浮かせて3秒キープする。

お尻の体操

 

④バランス力と筋力をつける運動

しっかり掴まれる手すりがある場合は、手すりを持って片足立ちをしてみるのも良いでしょう。身体の状態によっては難しい場合もあるため、無理のない範囲で行うようにしましょう。

 

身体に合った椅子を選ぶことも大切

 身体に合う椅子を使えば、介護が必要な方の座りを快適にするだけでなく、立ち上がり時の動作の安定性も保ちやすくなります。座面の高さや安定性などをよく見て、使いやすさと快適性の両方が叶う椅子を選びましょう。今回ご紹介したポイントを参考にしながら立ち上がり時の転倒を防ぎ、ご自宅で安心して暮らしていただければ幸いです。