介助する人の身体的負担を減らす食事や排せつのコツ

介護は、介護する人もされる人も、双方の負担が少なくなるよう心がける必要があります。特に自宅で家族の介護をする人は、自分自身の心と体の健康も損ねないよう注意すべきです。とはいえ、介護は無理な体制でせざるを得ないことや、介護の程度によっては重い体を支えることもあることから、介護する人の体の負担をゼロにすることは難しいでしょう。そこで今回は、特に頻度の多い食事や排せつの介助に焦点をあてて、体の負担を減らすコツについてご紹介します

 

介護する人が悩みがちな体の不調とは

 介護を行う人は、体と心の両方の健康を損ねないよう注意が必要です。ここでは、特に体の負担について見てみましょう。

 介護をしていると、さまざまな場面で体に負担がかかりますよね。要介護の度合いが高くなればなるほど、その負担は大きくなるでしょう。

 特に、腰や膝、腕などに影響を及ぼしやすく、ある時突然ぎっくり腰になってしまったり、慢性的な腰や膝の痛みに悩まされたり。こうした痛みは、介護の負担をより高めます

 

介護のプロも腰痛に悩んでいる

腰痛に悩む介護士

日頃から介護を仕事にしている人の多くも、腰痛に悩んでいます。介護の仕方を熟知しているプロですら腰痛等の体の痛みを起こすのですから、家族の介護を行う人はより慎重に体を労る必要があると言えるでしょう。

 腰痛が起こる一番の原因に、要介護者を無理な姿勢で抱えたり、不自然な姿勢で介護をしたりしていることが考えられます。これらは、ほんの少しの手間をかけるだけで腰の負担を減らすことも可能ですが、ついつい面倒で省いてしまい、腰を傷めることも少なくありません。

 介護時の体の負担を軽くするコツは、以下のとおりです。

便利な道具を活用する

前屈みにならない

正しい介護方法を身に付ける

 

具体的に、食事や排泄の介助の際の負担を減らすコツをご紹介します。

 

食事介助の時の介護者の負担を減らすコツ

食事介助

朝・昼・晩と、13回は発生する食事介助は意外と大変なものですね。食事を自分で食べることが難しい状態となると、かなり介護度は高いと考えられます。ベッドから起き上がったり、椅子に座り変えたりする場面でも介助が必要になるのではないでしょうか。

 

ベッド上での食事介助

 状態により、食事をベッド上で行う方もいるでしょう。この場合は、電動ベッドを使用して飲み込みやすい角度に座ってもらい、高さは介護者が椅子に座った状態と同じくらいの目線になるように調節します

 食事を口に運ぶ際、介助者が立ったまま前屈みに行うと、それだけで腰痛の危険性は増します。介助者が座ったら、体の向きは介護を受ける人に真っ直ぐになるようにして腰をひねらなくても良い状態にしましょう。

 

椅子に座っての食事介助

 食卓の椅子に座り変えることは、寝たきりの防止や誤嚥防止にもつながりますが、介助する側からするとなかなか大変です。介護度が高い人の場合、まずベッドから起き上がって車イスに乗り移り、それから食卓まで移動して、場合によっては車イスから椅子へと移り変えるという流れになるでしょう。

 ここまででも、身体的な介護の負担は相当なもののはずです。介護の必要度合いによりますが、無理をしすぎないようにしましょう。すでに腰痛を抱えて困っている方は、椅子に座り変える頻度を減らす代わりに車イスの環境を整えたり、ベッド上でも誤嚥しにくい姿勢を学んだりして家の中で行う介護が必要以上に負担にならない方法をとることをおすすめします。

 ご本人の動きが少なくなることに不安がある場合は、適宜介護サービスを活用して、家では難しい運動や活動を任せてみるのも良いでしょう。

 椅子に座った状態での食事介助も、ベッド上の時と同様に、介助者も椅子に座って行います。立ったまま前屈みで介助しないように注意し、腰のひねりが生じないように膝は介護を受ける人の方向へ向けて座ります。

 

排せつ介助の時の介助者の負担を減らすコツ

 排せつ介助もまた、腰への負担が大きい介助です。ベッド上でおむつを変える状態の人や、ポータブルトイレに座る人、トイレでの排せつを促す人、さまざまでしょう。

 

ベッド上でのおむつ交換

おむつ

ベッド上でのおむつ交換は、トイレやポータブルトイレに座るよりも簡単だ、という人もいます。確かにそうかもしれませんが、意外と腰痛のタネになりやすいことをご存じですか?

 ベッド上でおむつ交換をする時、自分の姿勢を客観的に見てみましょう。多くの方が、前屈みになっているはずです。これは、腰痛の原因になります。おむつ交換を行う時は、ベッドを高くしてできるだけ前屈みにならないようにしましょう。そのためにも電動ベッドはおすすめです。

 もし、電動で高さを変えることが難しいベッドを使っている場合は、介護する人ができるだけ前屈みにならないよう注意しなければなりません。ポイントは、屈むのではなく「しゃがむ」です。とはいえ、しゃがんだ状態での介助は難しいため、体の負担が生じないうちに電動ベッドへの切り替えをおすすめします。介護保険制度を使うと、経済的な負担が少なく必要に応じて電動ベッドをレンタルすることが可能です

 

ポータブルトイレ・トイレでの排せつ

 おむつでは排せつが難しい、たまにはトイレに座ってしっかり排せつしたいという方は、ベッドからポータブルトイレや車イスに移乗する必要があります。トイレの場合は、車イスからまたトイレへと移乗することとなります。

 この移乗介助も、介護者が腰を傷めやすい動作です。介護される人が立てない状態の場合、今座っているところから別のところへ、丸抱えに近い状態で移動しなければなりません。

 移乗時も前屈みで抱えようとせずに、しゃがんで重心を落として行うように心がけましょう。また、スライディングシートなどの便利な道具を使って、できるだけ安全に体の負担を少なくする方法をとりましょう。

 

日頃から体を守る心がけも大事

 家庭での介護は、とにかく1人で無理をしないことが大事です。負担が大きい動作は他の家族に手伝ってもらったり、介護サービスに任せたりして、自分1人で行う時は簡単な方法をとることが、結果的に家庭介護を長続きさせることにつながります。腰が痛くなりやすい人は、腰ベルトを着用して守る、腰痛体操を習慣づける、ストレッチをして筋肉を鍛えるなどの心がけも大事です