高齢期に考えたい、手入れしやすい家具と暮らし
以前は気にならなかった家具の掃除やお手入れが、いつの間にか大変に感じられるようになった。そんな経験はありませんか。食後にテーブルを拭く、椅子の下を掃除する、座面についた汚れを落とす。ひとつひとつは小さな作業でも、毎日のこととなると、負担は少しずつ積み重なっていきます。
家具を選ぶとき、私たちはどうしても座り心地や立ち座りのしやすさに目を向けがちです。けれど、日々のお手入れのしやすさも、家具を長く気持ちよく使うための大切な視点ではないでしょうか。
この記事では、素材に合ったお手入れの方法と、掃除の負担を踏まえた家具選びの考え方についてご紹介します。
家具のお手入れ、何が大変?

ひとことで「お手入れが大変」といっても、その中身は人によって違います。例えば、座面と背もたれの隙間に入り込んだ食べかす。テーブルの脚の付け根や裏側にたまったほこり。気になってはいても、手が届きにくい場所は意外と多いものです。
また、汚れそのものよりも、作業の動きが負担になっていることもあります。手を伸ばす、かがむ、家具を動かす。こうした動作が続くと、掃除のたびに疲れを感じてしまいます。
同じ家具でも、体力や体調によって、感じる大変さは変わります。以前は何ともなかった作業が、今日は少し億劫に感じる。そんな日があっても、決して不思議なことではありません。
大変さを整理すると、次のように分けられます。
・ 汚れが落ちにくい
・ 手が届きにくい
・ 家具を動かしにくい
どれに当てはまるのかが分かると、お手入れの方法を変えればよいのか、それとも家具そのものの使いやすさを考えたほうがよいのかを判断しやすくなります。
木部や張地に合ったお手入れを
まずは、今お使いの家具について、素材や仕上げに合ったお手入れを知っておきましょう。ここでは、「ささえて」で取り扱っている椅子やテーブルを例にご紹介します。
ウレタン塗装の木製家具
「ささえて」の椅子やテーブルには、ラバーウッド材にウレタン塗装を施した製品が多くあります。ウレタン塗装は、木の表面に塗膜をつくる仕上げです。
日常のお手入れは、柔らかい布での乾拭きが基本です。汚れが気になるときは、固く絞った布で拭き、そのあと乾いた布で水分を残さないように仕上げます。薄めた中性洗剤を使える製品もありますが、洗剤によっては塗装を傷めるおそれがあります。また、汚れを落とそうと力を入れてこすることも、塗装の表面を傷める原因になることがあります。やさしく拭くことを心がけましょう。
同じ木製家具でも、塗装や仕上げによってお手入れの方法は異なります。迷ったときは、取扱説明書を確認しましょう。
PVC張地の椅子

椅子の張地には、布や合成皮革などがあります。このうちPVC(合成皮革)は、表面についた飲み物や食べこぼしなどの汚れを拭き取りやすいのが特長です。「ささえて」でも、PVC張地を使った椅子を多く取り扱っています。
また、次亜塩素酸系薬剤による清拭に対応したPVC製品もあります。ただし、すべてのPVC張地が対応しているわけではありません。使用できる薬剤の種類や濃度、拭き取り方法は製品ごとに異なりますので、必ず仕様を確認してください。もちろん、普段の汚れも、張地に合った方法でお手入れすることが大切です。
隙間や脚まわりも確認
お手入れのしやすさは、素材だけでなく、家具の形にも左右されます。椅子の座面と背もたれの隙間、テーブルの脚の付け根、ネジ穴などは、細かなごみやほこりがたまりやすい場所です。
座面や天板は目につくのでこまめに拭いていても、普段は見えにくい場所は後回しになりがちです。こうした場所は、掃除道具が届くかどうかによっても、手間が大きく変わります。家具を選ぶときは、普段見えにくい部分のお手入れのしやすさも確認しておくと安心です。
家具を動かす負担にも目を向ける
ダイニングの床掃除をするとき、椅子を一脚ずつ引き出し、掃除が終わったら元の位置へ戻していませんか。椅子が複数あれば、持ち上げたり引いたりする動作を何度も繰り返すことになります。掃除機をかける前に椅子をすべてどかし、終わったらまた並べ直す。この作業が面倒で、つい床掃除が後回しになってしまうこともあるかもしれません。
床材によっては椅子を滑らせにくいこともありますし、脚の形によっては掃除機が入りにくいこともあります。同じ床掃除でも、家具によって負担の大きさは変わってくるのです。
では、軽い椅子を選べばよいのかというと、そう単純ではありません。軽い椅子は動かしやすい一方で、座ったときの安定性や、立ち座りのしやすさも同じように大切だからです。軽さだけで選ぶのではなく、バランスを見ることが必要です。
そこで、「持ち上げる」「引く」「脚まわりを掃除する」のうち、どの動作がいちばん負担になっているかを振り返ってみましょう。それが分かると、次に家具を選ぶときの手がかりになります。
家具選びでは、お手入れのしやすさも

家具を選ぶときは、デザインや座り心地、高さなどに目が向きやすいものです。けれど、実際に使い始めてから「思ったより掃除しにくかった」と気づくことも少なくありません。
そこで、購入前に、その家具を掃除している場面を想像してみましょう。例えば、次のような点です。
・ 椅子の座面に食べこぼしが付いたとき、簡単に拭けそうか
・ 背もたれとの隙間にごみが入ったとき、手は届きそうか
・ 椅子を複数動かす必要があるとき、無理なく扱える重さか
・ テーブルの脚まわりに、掃除機は入りそうか
ご本人がお手入れをする場合はもちろん、ご家族が掃除を手伝っている場合も、お手入れのしやすさは大切な視点です。誰が、どんな場面で掃除をするのかを思い浮かべながら確かめると、よりイメージしやすくなります。
もちろん、お手入れのしやすさだけで決める必要はありません。安定性や座り心地、そして本人の好みも大切にしたい点です。そのうえで、使い始めてから気づきやすい点を購入前に確かめておくと、後悔の少ない家具選びにつながります。
家具は、使うだけでなく、日々お手入れをしながら長く付き合っていくものです。今ある家具は、素材や仕上げに合った方法で、無理のない範囲でお手入れしていきましょう。そして新しく家具を選ぶときは、使うときの心地よさに加えて、掃除や管理の負担にも目を向けてみてください。
お手入れの負担が少しでも軽くなれば、その分、家具のある暮らしをゆっくり楽しむ余裕も生まれます。「この家具を、普段どうやって掃除するだろう?」と購入前に考えてみること。それが、家具選びの新しい判断材料になるはずです。
